フランスのビジネスマナー
Work | 2020-08-03
文化が違うフランスで働くということは言葉の違いはもちろん、ビジネスマナーも異なります。そこでフランスで働く上で大切なビジネスマナーをみていきましょう。
フランス人の「働き方」は?
フランスは、美食やアートの象徴として見られる憧れの国。しかし、仕事面ではネガティブな印象がありませんか?
一般的にいわれていることとしては
「フランス人は怠惰で、週に35時間しか働かず、休暇は大事、ストライキもたくさん、不平不満は言いたい放題」
しかし、世界の1人当たり名目GDP国際比較統計・ランキング(2019年データ更新)では日本(26位)より上である21位で、フランスは世界的に見ると「生産的な労働者」といえそうです。
フランス流の時間の使い方
勤務時間
フランスでは基本的には一週間に「35時間」労働です。
フランスでは、雇用主は残業に関する法律を適用する義務があるので、雇用主から残業を求められた場合は、報酬を受け取ります。
昼食は大事な時間
日本人にとって理解が難しいのは昼食の長さ。
フランス人はランチタイムを大切にしています。
仕事が忙しいときは日本人なら大急ぎで食ることが多いですが、フランス人はそのような考えはありません。
文化的に近いヨーロッパの中でも、特にフランス人は昼食に多くの時間を費やします。
バカンスはもっとも重要
休暇のために働いているように見えるぐらい、バカンスは重要です。もちろん仕事によりますが、三週間ぐらい休みを取ることは普通です。
日本では同僚に迷惑がかかることを気にして後ろめたい気持ちで取ることが多いですが、フランスでは当然の権利として皆が取得します。
バカンス中に会議がある場合でも、当然の権利として会議の日程を変更する様に言われることもあります。
そのため、同僚のバカンス中は仕事の電話は原則禁止。チームで働くときは休み前にあらゆる仕事を終わらせておくことをおすすめします。
フランスのビジネス礼儀作法は?
仕事上では「Vous」それとも「Tu」?
フランス語で「あなた」は「Vous」と「Tu」があります。
日本語に訳すと「Vous」は「あなた」であり、敬語になります。一方「Tu」は「きみ」であり、親しい人との会話に使用します。
そして「Vous」を使うことを動詞で「vouvoyer」といい、「Tu」を使うときは「tutoyer」になります。
さて、仕事では「Vous」で話すか「Tu」で話すか迷うことがあります。
仕事上の関係の場合、初期には、同じ年齢でも「Vous」ということが無難です。ある程度信頼関係や親しみを感じている時にtutoyerへ移行します。
また上司ともtutoyerにすることがありますが、それは目上の人が決めることが一般的です。目上の人から「tutoyerにしませんか?」と言われるまではvouvoyerを使いましょう。
あいさつの仕方は?
フランス人はお互い頬にキスして挨拶する習慣があります。この挨拶の方法は、私生活(家族、友人、趣味、パーティーなど)では一般的ですが、ビジネスでは一般的ではありません。
仕事では、握手することが一般的です。特に男性の間では握手が圧倒的多いです。握手するときはアイコンタクトを保つことが重要です。例えばもう一方の手をポケットに入れたままで握手しないことも大切です。
長い間お互いを知っていて、友好的な関係にある同僚だけが頬にキスします。
いずれにせよ、年齢や関係者の状況、関係の強さなどによって違いますので、フランスの同僚の行動に適応することが大切になってきます。そして、上司には向こうから頬にキスしてこない限り、こちらからキスすることはありません。
会話編
タブーな会話は?
プライベートに踏み込むことは避けよう
日本でも同様ですが、プライベートなこと(年齢、婚姻状況、給料)などの質問するのは失礼に当たります。
またも宗教関係の質問も避けた方が無難です。
戦争や政治のテーマは親しくなってから
第二次世界大戦や現在のヨーロッパの政治などのテーマは、人によって穏やかな会話ではなく、険悪な議論を引き起こす可能性がありますので、親しくなってからの方が安全です。
フランスの誇りを傷つけないように注意
フランス人は基本的に国への誇りが強い人が多いです。そのため、会話の際も、フランスの同僚の誇りを傷つけないようなテーマが選びをすることが好ましいと言えます。
例えば、国民的な古典作家、大統領、またはナポレオンなどの歴史上の人物を揶揄するような会話は避けた方が良いでしょう。
好まれる会話は?
芸術、文学、音楽、料理、ワインなど、より楽しいテーマから始めましょう。
そのようなトピックは特にタブーがなく、誰もが何かしら意見を言うことができますので、会話が盛り上がります。
会話を振る際にある程度の知識が必要になってきますので、時間があるときに勉強しておくと、より話が弾みます。
また当然ですが、自分の国のことを褒めてもらうと良い雰囲気になりますので、フランスの文化や技術を賞賛することは良い印象を与えます。
自宅に招待されたときは?
同僚から自宅に招待された場合は、断らず参加しましょう。指定された時間の約10〜15分後に到着するのが常識です。
夕食に招待されたら、お土産として良質のワインやプラリネチョコレート、または花束を持参しましょう。
花の数は奇数でなければならないとされており、かつ「13」はタブー。
花の種類としては、葬式の花である「菊」と愛の象徴「バラ」は適していませんので、他の花を選びましょう。不貞と裏切りを象徴する「黄色」の花も避けてください。
文化の違いを楽しんで
フランスで働くことは最初は大変かもしれませんが、フランスはこういうものだと理解できたら、案外適応できるものです。日本との相違点を逆に楽しんで過ごしてみてくださいね。
(文:池岸マオ)